
お酒の師匠はいくらいてもいいよね。〈小説と旅をする〉

es-pom webマガジンでは暮らしや旅のヒントになるお話を掲載しています。今回はイラストレーターとして活躍するうちやまりりさんからの読み物。
お酒が好きな人も、そうでない人も、新しい発見や出会いを求めに旅に駆け出したくなる一冊です。
〈前編〉日常から離れる。「山暮らし」とは?|山座熊川・福井県若狭町
『もし僕らの言葉がウィスキーであったなら』
お酒の師匠はいくらいてもいい。
仕事終わりのビールの美味しさを教えてくれた上司。シャンパンの高揚感を教えてくれた友人。そして、ウィスキーの楽しみ方を教えてくれた旅のエッセイ…!
『もし僕らの言葉がウィスキーであったなら』
著者である村上春樹さんがウィスキーの産地を巡り、旅の記憶とともにつづった紀行文です。
蒸留所の木樽の匂い、グラスのなかで揺れる琥珀色のかがやき。現地の様子が生き生きと描かれ、ページをめくるごとにウィスキーの香りをすぐそこに感じます。
次の旅はどんな一杯に出会えるだろう
旅先で、その土地の空気とともに味わう一杯がいかに贅沢かを教えてくれる。なかでも忘れられないのがこの一節。
“ダブルのシングル・モルトを注文し、殻の中の牡蠣にとくとくと垂らし、そのまま口に運ぶ。
うーん。いや、これがたまらなく甘い。牡蠣の潮くささと、アイラ・ウィスキーのあの個性的な、海霧のような煙っぽさが、口の中でとろりと和合するのだ。…それから僕は、殻の中に残った汁とウィスキーの混じったものを、ぐいと飲む。それを儀式のように、六回繰り返す。至福である。”
なんて美味しそうなんだろう。
牡蠣の潮の香りと、ウィスキーのスモーキーな風味がどう交わるのか、想像するだけで心が踊る。
調達すれば今夜にでも試せそうではあるけれど、できるなら、同じようにアイラ島で潮風を感じながら味わいたい。
この本はウィスキーの指南書であり、旅先でその土地のお酒を味わう楽しみを教えてくれます。
次はどんな一杯に出会えるだろう。旅の予定を立てよう。
ー END ー