
移動時間は最高の読書時間 〈小説と旅をする〉

es-pom webマガジンでは暮らしや旅のヒントになるお話を掲載しています。今回はイラストレーターとして活躍するうちやまりりさんからの読み物。
小説やエッセイ、言葉、文字というのは新しい旅の第一歩です。
あなたがいちばん読書に集中できる場所は?
私がいちばん読書に集中できる場所、それは電車のなか。スマホの誘惑を振り切って本を開いています。
読み始めさえすれば、あとはもうこちらのもの。
ページが進むごとに物語の世界へ引き込まれ、気づけば夢中になっているのが常です。
移動時間が長ければ長いほど嬉しくなります。あと10駅くらい遠回りしてくれないかと思う時もしばしば…。そんな私が電車のなかで出会う、さまざまなことば、本をご紹介していきます。
旅するエッセイとの出会い
この日は、バッグに忍ばせていた文庫本のかわいい表紙と目が合いました。
『ももこの世界あっちこっちめぐり』
言わずと知れた「ちびまる子ちゃん」ご本人、さくらももこさんの旅行エッセイです。1996年5月から約半年間にわたって世界中を旅した記録が綴られています。
「フライトがこわかった」 それだけ聞けばふつうの感想。
でも、ももこさんが書くと一気におもしろくなるんですよね…。
漫画のちびまる子ちゃんのように、顔に縦線が入っているのが想像できて、思わずクスリとしてしまいます。旅先のトラブルだって、おもしろおかしいエピソードになってしまい、言葉に魔法がかけられているような感覚に…。私は電車のなかで、必死に口元に力を入れています。
彼女の気持ちいいお金の使い方も素敵でした。
旅先で惹かれたもの、好きなものに、惜しみなく使う姿がかっこいいんです。1996年って景気よかったかな?と考えましたが、どうやらそういうわけではなさそう。
ちびまる子ちゃんがたくさん頑張って働いたからですね。ももこさん、さすがです。
もう着いちゃった?
そんなこんなで、読みふけっているうちに目的の駅に到着する私。まるで私も一緒に旅をしているような気分でした。
まだまだ読み足りない気持ちで、なんだか電車を降りるのが惜しいけれど、旅のつづきはまた次の電車で。
お読みいただきありがとうございました。
これからみなさまと、言葉と本で繋がれるのを楽しみにしています。
うちやまりり