
〈小説と旅をする〉温泉地に行くのが先か、読むのが先か

〈小説と旅をする〉の企画では、皆さんの思い出に残る一冊、旅に行きたくなる、旅の道中の相棒にしたい一冊などをご紹介しています。
道後温泉の話
いきなりですが、温泉地が舞台になる小説と聞いて何を思いつきますか?
私は文豪・夏目漱石の「坊っちゃん」を思い浮かべます。ただ、読んだのも遠い記憶で「どの温泉だったかな」と振り返りながら最近目を通しました。
「坊っちゃん」に出てくる道後温泉は、日本三古湯の一つに数えられており歴史ある場所です。足を運んだことがある方も少なくないでしょう。また、「足に傷を負っていた白鷺が傷を癒し、元気に飛び去った」という〈白鷺の伝説〉があるなど、温泉と共にさまざまなものがりに溢れている場所です。
キリがないけど探すのが楽しい
他にも昔の文豪の方は温泉地を舞台にした作品を、多く残しています。
・川端康成『伊豆の踊り子』ー湯ヶ野温泉
・志賀直哉『城の崎にて』ー城崎温泉
・尾崎紅葉『金色夜叉』ー熱海温泉
などなど…!エッセイなども含めればたくさん出てきます。
温泉地に行って、温泉地の小説を読んでみる、なんて旅の形も面白いのかなって(笑)まだ実践したことが無いですが、時々思ったりします。
温泉が出てくる小説は私の逃避場所
一方で、私が温泉地に行く時間が無い時に読んでいるのは著者:吉田修一「初恋温泉」という小説。
話の大枠としては5つの実在する温泉に、5組の男女が足を運ぶという短編集。男女のあれこれ、というテーマと旅先は正直よく見る形式ですが、温泉旅館の描写でふわっとした高揚感を感じられると共に、気楽に読めるというのが一番気に入っているところです。
結局のところ、私は小説を通して海外に思いを馳せたり、旅行について考えたりすることが多いので、「読むのが先」であることは間違いないのですが…。現実逃避したいとか、リフレッシュしたいときは、小説がどこかに私を運んでくれるので、それはそれで満足したりしています。
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