五感に触れる、わたしの旅

タシナミ〜菱田蒸溜所・大隅初のモルトウイスキー作り〜

es-pom(エスポム)web マガジンはさまざまな事業、取り組みにもフォーカスしていきます。「出会えるマガジン」を目指し、想いや製品、人などに出会う、きっかけづくりを行っています。

その中で出会ったのが「菱田蒸溜所」。

ウイスキーが好きな方でもまだ聞き慣れない、もしくは初めて聞いたという方も中に入るかもしれません。

菱田蒸溜所とは…鹿児島県・大隅半島に位置する大崎市「菱田」という土地に生まれました。元は、天星酒造という焼酎の蔵元で、1901年初代松永貞信氏が酒類製造業を創業、1954年三代目松永貞雄が株式会社を創設現在に至ります。「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2021」の焼酎部門で最高金賞を獲得するなど、焼酎作りに力を入れてきました。

そんな歴史ある焼酎蔵は、なぜウイスキー作りに舵を切っていったのでしょうか。

今回は、生産本部長・取締役:中原さん、製造責任者である小薗さんのお二人に話を伺った。

後列左端・中原さん、前列左・小薗さん

鹿児島に新しくうぶ声をあげた「菱田蒸溜所」

「鹿児島といえば芋焼酎!」

そう思う方もいらっしゃるでしょう。いやいや、ウイスキーづくりも熱を帯びている県です。ウイスキー好きな人からすると「旅行で九州に行くなら鹿児島!」「あそことあの場所にも…」なんて話の弾む地域でもあります。

しかし、そんな鹿児島県といえど、蒸溜所は薩摩半島ばかり。大隅半島にはまだモルトウイスキーを作る場所はありませんでした。そこで産声をあげたのが「菱田蒸溜所」。

ー菱田の地でウイスキー作りが始まりましたが、土地の良さも決め手になったんでしょうか?

中原:私は以前、滋賀県長浜市の長濱蒸溜所で3年間、ウイスキーの製造に携わっていました。現在は、天星酒造株式会社は焼酎蔵の立て直しだけでなく、もう一つの事業としてウイスキー作りを選び、進めています。菱田という土地には「超軟水(*1)」という他の土地と異なる長所があります。そういった土地の良さも活かし、長濱蒸溜所(*2)の姉妹蒸溜所として立ち上がりました。

*1菱田の水…平成の名水百選にも選定された「普現堂湧水源(ふげんどうゆうすいげん)」。日本は基本的に「軟水」とされる。硬度についてはマグネシウムとカルシウムの含有量によって分類される。日本では1ℓあたり、0~100mgが軟水に分類される。超軟水に関しては特別な区分はないものの1ℓあたり0~50mgと分類される。

*2長濱蒸溜所…滋賀県びわ湖北部にある日本最小クラスの蒸溜所。長濱蒸溜所は、クラフトビールの醸造所とレストランを併設。ブレンデッドモルトシリーズ『AMAHAGAN』は多くのウイスキー好きを唸らせ世界にも認められたシリーズ。参考:長浜浪漫ビール株式会社 HP

ウイスキー事業の立ち上げにおいては長濱蒸溜所からさまざまなアドバイスを受け、今回取材に応じていただいた製造責任者である小薗さんも長濱の土地に出向い、現地で1ヶ月ほど研修をしたという。その中で、菱田の土地の長所でもある「水」はどのように風味に影響を与えているのだろうか。

ーどのような印象の「ニューポット」が生まれましたか?

小薗:初蒸溜は昨年(2022年)11月に終えました。他の蒸溜所のいわゆる「ニューポット」と言われるものと比べると口当たりが優しいというか「まろやか」。ピリピリした感じもすくなく、丸みがあるというのが私の受けた印象です。

中原:小薗同様に、とても綺麗な酒質に仕上がったなという印象です。

菱田蒸溜所のこれまでとこれから

ー菱田蒸溜所の構想から現在までにはどのような苦労がありましたか?

中原:どこの蒸溜所さんでもそうですが、資金繰りの調整などは大変です。ハイブリット蒸溜機を入れたり、マッシュタンクなども新規で入れましたので、設備投資の面では苦労しました。また発注してからの月日、計画的なところは大変でしたね…(笑)

立ち上げにおいてすごく苦労しました。それも踏まえて4/14日からスタートした「マクアケ」によるクラウドファンディングで皆様のご協力がいただければ嬉しい限りです。

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【菱田蒸溜所】始動。無二の酒水と120年の蒸溜技術で生まれるウイスキーを届けたい

中原:私たちはモルトウイスキーだけでなくグレーンも自社で作りたかったので、両方でも使える形の蒸溜機とマッシュ・タンを新規で導入しました。多少改造はしていますが、ブレンデッド作りへの狙いもあってハイブリット蒸溜機を選択しました。

ー昨年の11月1日初蒸溜を終えた時はどのような気持ちでしたか?

中原:機材を入れてみて、どんなものができるか作ってみないとわからないというところもあったので…。

小薗:ですね。原酒が出てくるまでどんな酒質になるかの不安が大きかったかなと。

中原:正直、本当にお酒ができるかなというのはありましたね(笑)

一同:(笑)

小薗:もともと焼酎の蔵なので、焼酎蔵に住み着いている酵母、麹菌が邪魔しないのかなという心配はありました。できたニューポットがもっと焼酎っぽくなるかなという不安もあったんですが、ミルキーな酒質で、今後エイジングかけていくのが楽しみだなと。

中原:実際に出てきたニューポットは、初めてにしては良い出来だったんじゃないかなと思いますし、初日はとにかく出てきた!という安堵感が強かったですね。

ー現在、樽詰はどのように行われていますか?

小薗:グレーンはオーソドックスなバーボン樽にほとんど入れています。モルトはキャラクター樽、コニャック、シェリーとか…色々と。モルトに関してはさまざまな原酒を用意したいので色々使っているところですね。

ー今後、この菱田蒸溜所をどんな場所にしていきたいですか

小薗:僕の意見ですが、この土地はものすごっく田舎なんですよ(笑)。人口も大崎町は一万人ちょっと…。鹿児島に訪れた方はわかると思いますが、観光地といえば薩摩半島の方が多いイメージだと思うので、大隅半島は特段、観光のイメージがないかもしれません。そういう状況を打破して、観光拠点として、そして何より「大隅初モルトウイスキー」というのを謳っているので、盛り上げられる場所になりたいと思っています。

お酒はただ飲むだけでなく、さまざまな人の想いがのっかるからこそ美味しく感じられる。ウイスキーをまだ知らないという方も「作り手」から一歩踏み入れるのも面白いかもしれない。

INFORMATION

makuake-【菱田蒸溜所】始動。無二の酒水と120年の蒸溜技術で生まれるウイスキーを届けたい

販売はMakuakeが初!私たちが造る初めてのウイスキーをお愉しみください! みなさん、おやっとさぁ!「菱田蒸溜所」の小薗(こぞの)です! 私たちが働く「菱田蒸溜所」は鹿児島県大崎町の菱田にあります。もともとは天星酒造の名のもと、焼酎造りを専門にする蔵元でしたが、2021年に参加した日本唯一の洋酒品評会「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2021」の焼酎部門で最高金賞を獲得し、焼酎だけではなく洋酒の専門家からもたくさんのフィードバックをいただいたことで、大きく視野が広がりました。 そして湧きあがってきた想いが「わげぇのそつ(焼酎)を生む水を使って、ウイスキーを製造したらどげんなっかね?」。そこから様々な出会いを経て設備を導入、2022年の11月にウイスキー製造を開始しました。 熟成はまだまだこれからですが、蔵自慢の軟水を使用することにより、非常になめらかでフルーティなニューメイクが出来あがっています。販売は今回のMakuakeが初めて!私たちが造るウイスキーをぜひお愉しみください。

HP: https://www.makuake.com/project/hishida_distillery/

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ライター:はしもとももこ
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