カフェは身近にある旅先 Vol.1 Solo|駒沢カフェ
「え、あの建物に?」
近くに住む人々が少し驚いた。
店名はSolo(ソロ)。2024年2月に東京都世田谷区駒沢にオープンしたカフェである。
駅近というわけでもなく、商業的なエリアでもなく、大きな道路沿いに面した築年数もそれなりに経ったであろうビルの2階。確かに近隣の人からすれば驚くような場所である。
だが、入店してSoloというカフェで一息つき、退店した時に気づく。ノスタルジーを感じる部分と「私だけ」にとどめておきたい感情に。
「好き」が詰め込まれたカフェ
店主である山下華奈さんは山形県出身。元々は福島県で栄養士の仕事をしていたそう。当時からカフェが好きで、足を運ぶだけでなく好きなカフェの求人募集を見つけ、「好きすぎて働きたい」というきっかけで宮城県・仙台市にあるカフェで働き始めた。
「いつか自分もお店を開く…という構想は元々できていて、そこへ向かって働いていました。」
そして仙台から東京へ場所を移し、「カフェ」というジャンルのお店で山下さんは働き開業に至るわけだが、彼女自身が行くお店はカフェだけでなく喫茶店も多かったそう。その影響か、Soloはカフェと喫茶店が入り混じった雰囲気で、どことなく懐かしさを覚えつつも、少しだけ背筋を伸ばしたくなる雰囲気に仕上がっている。
「無意識的に、喫茶店とカフェが混ざったのかもしれないですね。置きたいものを選んでいったらこうなったという感じに…(笑)ですが、開業したらレコードは置きたいと思っていましたので以前から購入していました。」
他にも、フランスが好きな山下さんは2023年の9月、一人でパリを訪れ、その際に購入したという器も使われている。お店の中には、これまで培ったものと彼女の「好き」が詰めこまれているのだ。
誰かの目的地になる空間
そんなSoloの名前にはいくつかの由来があるという。
「一つは、自分自身が一人でカフェや喫茶店へ行くことが多かったからです。その時間に本を読んだり、自分がいつかお店を始めるときのメニューを考えて想像を膨らませたり…。そういう『一人時間』という意味でSolo。」
他にも、山下さんの好きなアーティストのアルバム「ソロモンク」からきている。
「『ソロ』というのが独奏や独唱、一人で演奏するという意味があります。そのソロと〈自分も一人でお店に立つ〉というイメージを重ね合わせました。」
よくカフェやコーヒーショップの店名には「〇〇カフェ」や「〇〇コーヒー」と入るものだが、そのシンプルさ、響きの良さも魅力の1つかもしれない。
彼女に今後の展望を伺ってみると「一人でお店に立つというスタイルは変えずに続けていきたい。」と話す。お店の名前にも含まれた想いだが、このお店の空間は彼女によってバランスがとられている。山下さんなしには保てないちょうどいい空気感。
「今のところお客様は思い思いに過ごしてくださっているので、これが日常化してくれたら嬉しいですね。『ゆっくりしたいときはSoloだよね』というようなイメージが広がってくれたら。」
現実と離れたい時、少しだけ気持ちを落ち着かせたい時、そんな時にぴったりの空間が待っている。
ーカフェは身近にある旅先 Vol.1 ENDー
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