五感に触れる、わたしの旅

川場村を美しく表現し続け、世界へ羽ばたく酒蔵|前編 永井酒造株式会社

川場村は群馬県利根郡にある。自然の宝庫と呼ぶに相応しい、豊かな自然が残るエリアだ。

その場所で、1886年から日本酒造りに取り組んできたのが永井酒造株式会社。定番ブランドには「水芭蕉」「谷川岳」といった商品があり、日本酒好きの方にはすでに知られている伝統のある蔵元だ。

「永井家は元々、長野県出身。ところが初代である永井庄治が138年前に川場村の水に惚れ込んでこの地へ移住。これが永井酒造のはじまりなんです。」

そう話すのは永井酒造株式会社・代表取締役 永井則吉 氏(以下、永井氏)。明治19年、永井酒造の酒造りがスタートし、永井氏は6代目にあたる。

永井 則吉 氏

永井酒造は、伝統を守りながらも革新的な取り組みを行う。そして何より、この地域でしか作れないもの、その時しか作れないものを大切にしている。川場村の自然に意識を向けながら永井酒造の物語を知っていただきたい。

永井酒造と川場村

「日本酒造りには水が欠かせません。川場村以外の水では、私たちの造るお酒を表現できない。」

日本酒造りのノウハウがあったとしても、酒蔵周辺の自然環境や水が持つ力の大きさを、永井氏は初めに伝えてくださった。

川場村は利根川の源流域の一帯。流れている川は小規模だが、一級河川が4本流れる。(一級河川:国土の保全または国民の経済上の観点から、特に重要な水系(水源から河口までの本流とそれに流れ込む支流をまとめて呼ぶもの)として、国土交通大臣が指定した河川)

美しい自然があり、かつ水が綺麗であることが川場村の大きな特徴。だからこそ、地元の自然美を表現する美しい酒造りを目指しているそう。

「私たちの酒造りに川場村は切っても切り離せません。3代目である父は特に『地域の人』として村と繋がりました。父は村長として農業と観光という大きな産業に貢献。その後村長は6代変わっていますが、父のコンセプトを引き継ぎながら村を発展してくださっています。」

永井家と川場村の繋がりや取り組みを知ることによって、日本酒造りだけではない物語を感じられる。

さらに、これまで積み上げてきたものを発展させようと、6代目蔵元となった永井氏は「お酒を通じて地域を世界ブランドにする」というテーマを掲げている。

永井酒造のオリジナリティは何か

ここで少し定番品(ブランド)に触れておきたい。

「水芭蕉」「谷川岳」という商品がある。

水芭蕉/谷川岳

「ミズバショウ」という言葉を聞くと、尾瀬国立公園を思い浮かべる人もいるだろう。湿原に浮かぶ綺麗な白い花は可憐である。

谷川岳は日本百名山の1つで、利根川源流に位置する場所だ。自然や山が好きな方からすると一度は足を運んだことがある場所かも知れない。

と、ここまで聞いてわかる通り、商品名にはそれぞれ、自然の豊さや風土が反映された、人々に馴染みのある名前がつけられていて、永井酒造を取り巻く自然環境と日本酒造りを現している。

永井酒造のお酒を手にするうちに、永井酒造の酒造りはどのように、地域特性を表現しているのか気になった。

「私たちの酒造りと地域特性ですね。やはり、一番大事にしているコンセプトは、川場村を表現する綺麗なお酒造り。そして、飲み続けられる食中酒。この部分です。」

永井氏は1杯目より2杯目、3杯目と、飲み進めるたびにおいしさが増す、そんなお酒造りを心掛けていると話す。

「『永井酒造のオリジナリティは何か』を考えた時に、『水』を中心核とした仕込みに重きを置きました。『水』自体を表現するためには綺麗な酒造りを行うこと、飲み続けられる食中酒を目指すという考えが大元にあります。」

酒造りに使われる水の硬度は50~60mgで軟水に属する。

硬度は酒質に影響するため、日本酒であれば「なめらかさ」「やわらかさ」または繊細さの部分に関わってくる。

1つの日本酒から川場村の風土や水、素材へと頭の中で旅ができる。それだけ長い年月をかけてこの土地に根を張り、コツコツと酒造りを続けてきたからこそ、表現できる形なのかも知れない。

ー前編|ENDー

参考:evian japan・ミネラル量と水の硬度、硬水と軟水の違い

INFORMATION

永井酒造株式会社

創業1886年 群馬県最北部 利根川の源流域に位置する川場村で酒造りを行う日本酒蔵。

住所: 〒378-0115 群馬県利根郡川場村門前713

HP: https://nagai-sake.co.jp/

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