五感に触れる、わたしの旅

【八王子蒸溜所#02】「トーキョー」のクラフトジンを目指して

前回の記事はコチラ→【八王子蒸溜所#01】八王子にクラフトジンの蒸溜所ができた日

〈一部の愛好者に喜ばれる嗜好品の枠を超え…〉

という文言は、東京八王子蒸溜所HPに記載されている言葉だ。

「クラフト」という言葉とお酒の掛け合わせは昨今多く聞かれるようになり、気軽に楽しめるようになった印象だ。しかし、中澤さんは「広く普及させられる」「文化の1パーツになれる」そんなモノづくりを目指し取り組んでいる。

〈トーキョーハチオウジン〉

は事業開始当初から今まで続く思い、考えの詰まったクラフトジンである。

    Writer:es-pom編集部

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あえてトラディショナルな製法をベースに

〈トーキョーハチオウジン〉誕生に向けて最初に意識した部分は2つあると話す。

1つめが「モノづくりをしっかり行う」、2つめが「どうやって伝えていくか」という部分。

「いいものを作り、どう伝えるか…。これは両軸しっかりしていなければ成り立ちません。1つめの〈ものづくり〉に関してはKOVAL社の研修を踏まえ、その技術に基づいてしっかりとした〈品質〉で製品を作り上げました。

ただ、〈トーキョーハチオウジン〉は昨今続いてきたクラフトジンのイメージとは異なり、

あえて「ロンドンドライジン」という伝統的な製法を目指した。

ロンドンドライジンと聞くと難しく聞こえるが、ビーフィーター・タンカレー・ゴードンなど、大手メーカーから国内に販売されていてコンビニやスーパーのアルコール販売コーナーでも置いてあるものを想像するといい。

細かな定義は別途参考を覗いてみるといいが、わかりやすく言えば、カクテルベースにも用いられるもので、ある定義にそって作られた個性が少ないジンである。

【参考:TOKYO HACHIO GIN

【参考:liquor page・ロンドンドライジンやオールドトムなど…タイプ別ジンの定義まとめ

〈トーキョードライジン〉を目指して

model:sakino

世間一般で言えば

クラフトジン=特徴のある風味

という考えもあるだろう。

ロンドンドライジンタイプは各メーカーの有名なボトルが存在する分、あえてこの製法を用いる必要は無い。というよりもクラフトジン作りの考え方として、「個性を出す」ということが大切だ。

しかし、中澤さんはあえて伝統的な製法でトライした。

「伝えるという部分にも繋がってきますが、端的に言えば〈トーキョードライジン〉を目指した、ということです。」

  • 原料となるジュニパーベリー

ロンドンドライジンはロンドン、中澤さんが惹かれたクラフトジンはパリ、研修に行った場所はシカゴ…。共通するのは都市であること。どれも「都市型の蒸溜所・ジン」であり、中澤さんの場合は

「トーキョーのジンはコレ!」というものを目指したわけだ。

日本の酒造りは全国各地で行われいて、昨今では土地のものを活かした製品作りが行われている。クラフトジンにおいても同様で、各地域の特産品などを用いたり、人気の果実を主体に作られることも。

しかし、クラフトジン作りの普及とは反対に、

「東京のジンはこれだ!」というものはなかった。

「ジンの主役はボタニカル。ご説明の通り伝統的なロンドンドライジンをベースにしています。それにプラス、日本の和の要素を入れようと。和の柑橘としてレモンと甘夏の2種類を。素材としては、それだけです。日本のものというのは。」

飲んでみる、飲み比べてみるとわかるが、ロンドンドライジンのような伝統的なジンの風味と

「どこか日本らしさ」が加わってくる。

そしてどの飲み方でも芯が折れず、すっと口の中に広がり、膨らみ、体の中に入っていく。

「日本らしさというのは表現しづらいところですが、最終的にどこで出るかっていうと、多分私の舌なんですよね。

最終的に何を良しとするか、味のバランス感覚というのは難しい部分だが、これは昔から日本で生まれ育ち、養われてきた感覚でしか表現できないと部分だ。

「だからこそ伝統的だけど(ロンドンドライジンのような)どこか日本っぽい…。そう伝わるのが1番望ましいかなって考えています。」

抽象的ではあるがそうとしか表現できない独特の世界である。

「ジンというお酒はカクテルベースとして使われる、という大切な役割を持っています。なので、やっぱそのままで美味しい、というのが大事なんです。カクテルにした時に、どういう味わいになるかっていうところは、かなり意識して作っていますね。

最後に今後の展望と新しい取り組み、注目の素材について伺った。

「まずは八王子から世界へということは考えてます。まずは、日本の皆さんに広く知ってもらう、それだけではなくて、東京発のクラフトジンっていうのを海外に対してお届けしたいですね!そして、注目の素材…ですよね?笑」

少しだけマニアックな質問になったが、お酒好き、クラフトジンに関心がある人に向けて取り組みを話していただいた。

「トライの段階に入ってるんですが、次の別の素材として、今、小麦のスピリッツは準備段階に入っています。」

それが

〈小麦のスピリッツを使ったジン〉

だそうだ。

ジンのベースとなるスピリッツには、基本はコーン、トウモロコシ由来のものを使っているが新しい一歩に踏み出しているそう。

「あとは樽。これは物自体はあるんですが、まだ忙しくて手がつけられていない…。やはり基本となる商品の在庫を潤沢にしないといけないというのもあるので…時間ができればすぐにトライしようと思っています。」

八王子蒸溜所は忙しない日常から少しだけ離れ、新しい感覚を引き起こしてくれるそんな場所。

これからも八王子蒸溜所、クラフトジンの動きから目が離せない。

-end-

トーキョースパイスジン (2023年7月発売)

トップノートはマリーゴールドの華やかで甘く香り高い味わいが、ボディとなるミドルノートはクローブ、シナモン、カルダモンで深みのある重厚感を、ラストノートはジンジャーと胡椒が刺激を与え、爽やかな疾走感ある香りと味わいをもたらします。【引用:TOKYO HACHIO JIN 製品ページより】

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