〈小説と旅をする〉『夜のピクニック』と10代の私。
〈小説と旅をする〉の企画では、皆さんの思い出に残る一冊、旅に行きたくなる、旅の道中の相棒にしたい一冊などをご紹介しています。
『夜のピクニック』を読んだ10代の時の私。
私がまだ学生の頃、友人のススメで手に取った一冊。
恩田さんは「ノスタルジアの魔術師」と言われるくらいに、情景描写に定評がある方。とは言っても、当時はすぐに著者の特徴がわからなかったので、友人からススメられたものとはいえ、読み始めるまでに少し時間がかかった記憶があります。
内容としては、大枠で言えば青春。物語の舞台となる、とある高校の伝統行事「歩行祭」の中で、主人公の密かな誓いと心情の変化が描かれている作品です。
「歩行祭」は全校生徒が徹夜で80km歩くというもの。一般的な修学旅行とかより思い出になりそうだな〜と、学生時代の私はちょっと憧れていました。(実際に80km歩くなんて学生時代じゃなきゃ無理…(笑))
読んでいて感じたのは圧倒的な「没入感」。いつ、どこで読んでいても気付けば小説の中の情景に足を踏み込んでいるのです。「歩行祭」に参加しているわけではないけど、主人公の女の子と同じ立場で道中、歩を進めているような…なんだかふわっとした気持ちで物語に入っていた記憶があります。
読むたびに感じ方が変わる小説はありますか?
なぜ、この作品を私がピックアップしたのかというと…
『夜のピクニック』は年齢を重ねるごとに見方が変わってくる、感じ方が変わってくるからです。正直、10代の私ですら読む時々で、いろんな変化を感じていました。
もしかすると、みなさんも同じような小説があるかもしれません。人生を変えるというのは大袈裟かもしれませんが、小説の中で広がっていく物語、言葉の数々にこれほどまで力があるのかと、10代の私は驚かされました。
それが私にとっては『夜のピクニック』。
大人になってからは「過去を懐かしむ」感覚で読んでいる時もありますし、ずしっと何か重石を乗せられたような感覚で読むときも。
青春時代だった!と言えるほど立派な青春時代を過ごしていない私は、この小説の中にある青春を今も昔も辿っているのかもしれません。
年齢問わず読めるのが特徴でもあるので、ちょっと時間があるときに手に取ってみるといいかもしれません。
-END-