
連載:光の島記録 #01

es-pom webマガジン編集部です。今回は、香川県にある直島に飛び出した光さんのコラム。彼女は、身におきたさまざまなことをきっかけに、香川県にある直島へ足を運びました。そんな彼女の〈島記録〉を、この読み物では記していただきます。
Contents
光の島記録
ちょうど一年前の2月の話です。
友達が「島に旅に出よう!」と誘ってくれて、一泊二日、とある島を訪れました。その時の私はすごく気持ちが沈んでいて、曇り模様の暗い世界の中に閉じこもっていました。
そんな私が島に足を運んで何が変わったのか。どんな感覚と出会ったのか。不思議と記録に残しておきたいなと思いました。
私と似たような感覚の方もそうではない方も、日常から離れることにちょっとだけ目を向けてみてくれたら嬉しいです。〈光の島記録。〉は、私が島で出会った感情や感覚を綴っていきます。
夢の中にずっといられたら
友達と足を運んだのは直島。香川県にある島で「アートの島」としても有名です。
そして、少し歩けば目の前に広がる綺麗な海。美しい景色を遮られることなく、どこまでも続く海を眺めることができる素敵な場所。
「いつか住んでみたい。」という感情が、直島に足を踏み入れた私に自然と沸き上がってきました。
自分の好きな建築家が設計した美術館で働けたら最高だろうし、休みの日にはパンを買って海辺で黄昏れる…なんてことも素敵だし…。

そんな日々を過ごせたら、どんなに幸せだろうと夢想しました。
しかし、日常生活に戻ると、再び訪れる現実が私の心を曇り模様に変えていく…。正直、毎日をただ耐え抜くだけで精一杯。直島で出会った心が満たされるような感情は、いつの間にか消えていきました。
そして崩壊寸前になる私の心。
直島への旅行から3ヶ月後。大好きな祖母との別れが訪れました。
どうして――
少しでもいいから、日常に光を灯してほしい。そう願っていたときに読んだ本に、救われる言葉がありました。
わたしの選択肢
「若い女の人たちの日常は、しあわせになるために選択しなければならないことや、よりよい自分になるために磨かれなければならないものでいっぱいなのだ。彼女たちにはいくつもの選択肢があって、いくつもの誘惑があって、いくつもの偶然と事件が折りかさなっていて、そのどれを選ぶかで人生の色合いが変化するようは、そんな可能性に満ちているのだ。」
この言葉が目に映った時、ふと考えました。
「私は今、どんな選択肢を持っているんだろう?」
その答えは、すぐに見つかった。
仕事をやめて、島に旅に出る。
現実から逃げるだけの行為にも思えたけれど、俯瞰してみると「よりよい自分になる」ために私は何もしていなかったことに気づいた。ただ、もがき苦しむだけの日々。果たしてそれでいいのか、という自問自答の日々でした。
「仕事をやめて島に出る」なんて、昔の自分だったら非現実的に思っていただろう。でも自分の人生の色を変えるための選択肢のひとつにあがってきているのであれば、選択しない手はなかった。


そして2024年の9月。
私は決意し、大好きな建築家・安藤忠雄さんが設計した美術館があり、「アートの島」として知られる直島に移住しました。
あの時、旅の中で感じた「心が満たされる」という感覚を、今度こそ日常にできるかもしれない。
そう信じて、私はこの場所で新しい一歩を踏み出しました。
ー #01 END ー