五感に触れる、わたしの旅

お酒、これからの、あなたへ|松濤倶楽部 ep1

東京は渋谷、松濤というエリアに拠点を持つ「松濤倶楽部」。渋谷駅から向かうと騒がしいスクランブル交差点を越え、若者で賑わう109、そしてビッグカメラを左手にBunkamuraの方へ向かっていく。次第に人の数も減り、少し落ち着いた通りに出るとその地下にあるのが「松濤倶楽部」である。

「会員制」と記された重たい扉にやや圧倒されるが、これまでも多くの方がこの扉を開いて、「少し羽を休める」そんな空間として松濤倶楽部に来店してきたわけだ。オーセンティックバーという形ではあるが、一度行ったらまた行きたくなる…そんな安心できるバーだ。

エントランスの「会員制」はあくまで体裁としていてお酒が好きな方はウェルカムだそう

今回は松濤倶楽部のバーテンダー、角内昂成さん、佐藤伸一さんにコロナ禍と向き合った数年を振り返りつつ、これからお酒と出会う方、より深く入っていきたい方へ向けて、お酒の楽しみかたを話していただいた。

世界一酒の多い喫茶店?

「コロナ禍」という言葉も2022年の途中から世間は口にしなくなった。忘れたい、と誰もが思う期間だっただろう。そんな特殊な期間が数年続くのはオーセンティックバーという形態である以上厳しい時期であったのは間違いない。松濤倶楽部はどのように考え、そしてどんな変化を経て2023年を迎えているのだろうか。

  • 左から角内昂成さん/佐藤伸一さん

佐藤:厳しい期間でしたね。お酒を飲みに来てください…とも言えないわけですから。その中で私たちは酒販免許を取得し、「おうちで作るマティーニセット」や、「ブラインドテイスティングセット」なんかを作り、常連のお客様を中心に販売しました。もちろん、クローズドな環境ですが横の繋がり、お客様との繋がりを得た印象です。

Q:飲食店の「お酒の提供」は難しかったけれど、「お酒を売っていい」というのは1つポイントになったわけですね。

佐藤:そうですね。マティーニセットなんかはロックスタイルで…という形にはなりましたが、家飲みとして楽しんでもらえたかと思います。もちろんネット上で広く売ってしまうと、営業スタイルからかけ離れてしまうので、狭い範囲で売らせていただきましたが。

Q:となると「家飲み」という言葉の拡がりも特に抵抗感はなかったのでしょうか?飲食店やバースタイルのお店からすると「世の中が落ち着いたら飲みに来てほしい」「家飲みにハマりすぎて欲しくない」なんて思ったりもすると想像できますが。

角内:ん〜(笑)ないわけじゃないですね。きてくださいとは言えないけど、その中で家で楽しめるものを…というスタンスで動いていた感じです。

佐藤:ただ、コロナ禍中、昼営業をしていたんですが、その影響もあって近隣のお客様も増えました。喫茶店営業ですね。「世界一酒の多い喫茶店」ということで…(笑)

一同:(笑)

佐藤:今まで、通常の営業でも目立ちづらい看板でしたので近隣の人には印象に残らなかったかもしれません。それが明るい時間にも見てもらえるようになって、近隣の新しいお客様がきてくださるようになったという流れです。

角内:近隣はオフィスワーカーの方も多く、昼にしかこのエリアに訪れなかった、利用しなかった方が、昼営業をきっかけに松濤倶楽部を知ってくださり、仕事終わりに立ち寄ってくださる、という機会も増えました。

新しい場所への踏み出し方

そんな苦労の絶えない時期を越えながらも新しい考えが生まれた以上そこに向き合い、活かすのも1つ重要なことだ。例えば「家飲み」という言葉が使われるようになり、お酒に対する考え方、楽しみ方も変化した。一方で、この期間を経て外食へのモチベーションが高まったり、お酒を嗜むことへの楽しみを覚えた、という人も少なからずいるだろう。

そんな方でもオーセンティックバーを楽しめるか、その入り口を伺ってみた。

気軽に足を踏み入れて欲しいという佐藤さん

佐藤:バーへの来店時の注意点ですか。服装や足元に気を遣っていただくくらいで、かしこまった服装で来ないといけないということはありません。注文の仕方にしても、どんどん大雑把にリクエストいただいたり、声をかけていただければ問題ないですね。もちろん苦手なものやNGがあればその都度こちらも聞きますが、言って頂いて構いません。

角内:あまり知識や先入観なども入れなくても大丈夫です。もしかしたらその方が面白いかもしれないですね…。自分がどれが好きなわからない、という状態でいる中で「甘いもの」「酸っぱいもの」とかいろんなリクエストをしていくことで、自分の好みが見つかるはずなので。

佐藤:バーにあるお酒はそこにいるバーテンダーが一番知っている、と言う考えもありますからね。

角内:そうですね。どんどんリクエストいただく中で、「じゃあ次はこうしたい」とか、「これが好きだからずっと飲みたい」などの話にもつながってきますから。本当にリラックスして、私たちを頼りながら好きなお酒にたどり着いて欲しいと思います。

あまりかしこまらずにどんどんリクエストをしていただいて好きなものを見つけて欲しいと言う角内さん

お二人ともに、柔らかい表情で答えて頂いた。確かに「そこにあるお酒はバーテンダーが一番知っている」と言うのは事実。お酒が好きな人で、よくバーを利用する人にとっても少し襟をただせる、そんなフレーズにもなったのではないだろうか。

一方で、バーを知ればより家飲みも充実してくる。まだ踏み出せなくても家でのお酒をワンランクアップさせるアイデアを聞いてみた。

佐藤:家でカクテルを作るのは大変ですからね…。まず最初に、家でのお酒の楽しみ方としてまずは「氷」を買ってみて欲しいです。氷屋さんって意外と身近な場所にあったりするので、キューブ氷を買ってみて、ハイボールとかチューハイでも飲んでみるとより楽しいかもしれませんね。

角内:私はグラスを集めるのが趣味というのもあるので、楽しみ方としてはグラスを変えたり…とかですね!普通のタンブラーよりは柄が入っていたり、一目惚れして買ったものでソーダ割りなんか飲みますね。食器好きな方もいると思いますし、ぜひやってみて欲しいです。

そうお二人が言うように、ちょっとしたアイテムを添えて今日のいっぱいを豊にしてみると、少しだけリラックスできるかもしれない。

続きはこちらから:「バーに行く。:松濤倶楽部EP2」

INFORMATION

松濤倶楽部

松濤倶楽部は、渋谷区の高級住宅街・松濤にある1990年創業の歴史あるバーです。 お酒だけではなく大人の遊び場として時間・空間をお愉しみ頂けるよう様々な遊びや催しもご用意させて頂いております。 是非一度、足をお運び下さい。 営業時間 [平日] 18:00~26:00 [土・日] 17:00~24:00 定休日:第3日曜日

住所: 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町37-12 眞砂ビル B1

TEL: 03-3465-1932

HP: https://www.instagram.com/shoto_club/

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