五感に触れる、わたしの旅

沈んだ夜に、キッチンで気持ちを整える

Photo/陽|haru Text/陽|haru

気持ちがしぼんでしまった夜

悲しいことがあった夜、不思議なくらい何もする気が起きなくなった。

頭の中でさっき言われたことを何度も反芻してしまう。体がずんと重くなるようでした。
気づいたら、部屋は薄暗くなっていて、明かりをつける気力さえ少し遠く感じていました。

同居人に「何も作る気力がないから」と何か買ってきてもらおうかと考える。

今日こそは、冷蔵庫の食べ頃を過ぎそうな食材たちを救い出さなければ。
そう思っていたのに、その気持ちも一気に萎んでしまいました。

キッチンで取り戻す静かな時間

それでも重い体を起こしキッチンに立ったのは、手を動かすことで自分を癒したかったからかもしれません。

冷蔵庫に残っていた鶏肉と少ししんなりしてきたほうれん草。
特別な料理を作る気力はなかったけれど、頭の中にある”お守りレシピ”を作ることにしました。

シリコン容器に鶏肉と塩麹を入れ、軽く揉んで味をつける。せいろを準備し、蒸していく。
火が通るのを待っている間にほうれん草はさっと茹で、ごま油と鶏だし、少しの塩で和える。実質30分程度でできた、簡単な夕ごはん。

静かなキッチンで手を動かしていると、ぎゅっと張りつめていた気持ちが少しずつほどけていくような気がしました。

考えたくないことを無理に整理しようとしなくても、ただ目の前の作業に意識を向けるだけで、心が静かになっていきました。

温かいごはんがくれる安心感

出来上がった料理を口に運ぶと、素朴でやさしい味がじんわりと広がる。決して特別な味ではないのに、体と心の栄養を補給してくれている感覚がありました。

「ちゃんと食べれている」という安心感と「こんなときでも自分のためにごはんを用意できた」という小さな達成感がじんわり胸に広がる。

見た目は華やかではないけれど、シンプルなごはんだからこそ、ちょうどよく寄り添ってくれるような気がしました。

今日もまたキッチンに立つ

悲しいことがあった日や気持ちが沈んでしまった夜ほど、何もできない自分を責めてしまいがちです。でも、そんなときに作った一皿が自分の気持ちをそっと掬い上げてくれることがある。

ただ、自分のために用意した温かいごはんが、少しだけ心を整えてくれる。

そんな瞬間を信じて今日もキッチンに立ちたくなるのです。

-END-

    Writer:陽|haru

衣食住に関わることが好き。自分らしく生きるために、心地よい暮らしやすこやかに生きることについて模索している。趣味は写真撮影と文章を書くこと。

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