夜になると、頭がうるさくなる
夜になると、急に頭の中がざわつくことがあります。
何が不安なのかはっきりしないのに、ぐるぐると考えだけが回っている。言葉にならないまま、焦りだけが残る夜。
そんなとき、私はよく「クリアにしなきゃ」と思っていました。
ちゃんと整えてから眠りたい。
このまま一日を終わらせたくない。
きれいな状態で区切りたい。
そう思えば思うほど、思考は濁っていきます。
足しても整わない夜がある

本を読んでみる。
バスタイムを長くしてみる。
甘いものを食べてみる。
何かを足せば、落ち着くはずだと思っていました。でも、その夜は整いませんでした。本は頭に入らず、お風呂でも考えは止まりません。体はそこまで疲れていないのに、頭の奥だけが重たい。
どうにかしたいのに、どうしていいかわからない。その焦りが、さらにぐるぐるを強くしていました。
そんなとき、お香を一本灯しました。
マッチを擦る音。
一瞬だけ広がる火の匂い。
やさしく立ちのぼる香り。
お香は、ただ静かにともり続け、少しずつ短くなっていきます。約90分。
何も生まれない時間でした。答えも出ず、成果もなく、ただ香が減っていくだけ。
それでも、その時間は不思議と落ち着きました。
満たされるのではなく、静まる

満たされたわけではありません。
気持ちが高まったわけでもありません。
さっきまで頭の中を占領していた考えが、少し遠くなりました。
止まらなかった思考が、ゆっくりと間をあけるようになりました。
「どうにかしなきゃ」という焦りが、ひとつ小さくなりました。
自然と考えがまとまり、文字がすらすら出てきました。
読みたかった本も、静かに開けました。
整ったというより、視界のくもりが少し晴れた感覚でした。
何も足さない夜もある

あの夜に足りなかったのは、何かを増やすことではなく、何も足さない時間でした。
焦る夜ほど、私たちは整えようとしてしまいます。
でも、整える前に、ただ減っていくものを眺める時間もあります。
整える前に、何も生まれない時間を置いてみてもいいのかもしれません。
参考:APFR公式サイト
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