献立を考えられない帰り道
連日のように仕事が続くと、帰り道はもうくたくたで。
スマホでショート動画を無心で眺め、「今日は何を食べよう」と考える気力すらなくなってしまうときがあります。
「最寄りのスーパーでさっとお惣菜を買って帰ろうか」と頭によぎるけれど、ふと冷蔵庫に残っていた野菜を思い出す。半分だけ使った白菜や少しだけ残ったきのこ、特売で買ったお肉。それらを使わなければならない。
そんな日に私を何度も救ってくれたのが鍋料理でした。
鍋料理のいいところは、難しいことを考えなくてよいところ。
冷蔵庫にある野菜と好きなお肉を切り、火にかけ、だしや醤油、みりんで味を整えるだけ。
献立を考えることすら手放したくなる夜でも、手を動かしているうちにきちんとしたごはんが完成します。
その手軽さが仕事終わりのぼんやりした頭にも有り難い。
暮らしの感覚を取り戻す

仕事終わりの料理は疲れた体に鞭打つようで、億劫になりがちです。
だけど、包丁で野菜を切るときの感覚、まな板に響く音、鍋の中でぐつぐつと具材が煮える様子を眺める時間。部屋に湯気が立ちのぼってあたたかな匂いが広がっていく頃には、不思議と心が静かになっている気がする。
一日中頭を働かせていた私にとって台所に立つことは、暮らしの感覚を戻してくれる時間なのかもしれません。
そして、出来立ての温かいものを口に運ぶと、体の奥からじんわりとほどけていく。
「今日もおつかれさま」と自分で自分のことを労っている気持ちになります。
切って、鍋に入れて、火にかける。
手の込んだ料理じゃないけれど、自分のために用意したという事実が「ちゃんと生活をしている」という実感を濃くしてくれる気がしました。
豪華じゃなくても満たされる

疲れ切った夜は、出来合いのものを買ったほうが早いし簡単です。それも悪くない選択。
でも、自分のために何かを作るという行為そのものが、思っている以上に心を整えてくれる。
忙しい日の鍋料理は豪華ではないけれど、体も心も静かに満たしてくれるのです。
ー END ー
